Metaverse Talks

世の中のためになるゲーム

メタバースをどのように定義するか?

「メタバース」という言葉は人によって定義が異なるため、私は敢えてあまり言っていない。人々はさまざまな視点を持っており、将来どのようになるかについて独自の考えを持っていると感じている。自社としてはこういうものですと言ってしまうと、できることが制限されてしまう。

私たちはオンラインでの新しい種類のユーザーインタラクションと、メタバースで実現する新しい種類のユーザーコミュニティに関心を持っている。私たちはファイナルファンタジーXI、ファイナルファンタジーXIV、ドラゴンクエストXなどのオンラインゲームを通じて、仮想空間におけるユーザーインタラクションとユーザーコミュニティのエンゲージメントに長年関わってきたからだ。

私たちはユーザーインタラクションとユーザーコミュニティがゲーム体験の非常に重要な側面であることを理解している。仮想現実(VR)やブロックチェーンなどの新しいテクノロジーはそこに新しい要素をもたらすことになる。私たちは、メタバースはユーザーインタラクションとユーザーコミュニティの進化版であると捉えている。

分散型ゲームまたはブロックチェーンゲームの未来について最もワクワクすることは何か?

私たちのゲームの大部分は、クリエイターが完成形として提供し、その中でユーザーに遊んでもらっている。このような仮想世界での体験が私たちが提供するオンラインゲームであり、これがほとんどの人が今メタバースとして想定しているものだと私は思っている。

しかしブロックチェーンのゲームはそこに全く新しい要素をもたらしてくれる。コミュニティにおける新しい創造活動にインセンティブをあたえるためにトークンを使うことなどが考えられる。例えば、地図の制作会社はユーザーにトークンを配って、地図データを収集してデジタルマップを開発することができる。

これは、ユーザーの新たな関心を呼び起こすだけでなく、社会問題の解決にも非常に有効な手段になると思う。例えば日本のある会社は最近、マンホールのメンテナンスをクラウドソーシングするにした。特定の地域のユーザーに劣化し始めたマンホールを特定し、メンテナンスチームのために会社の データベースに写真を送信するように依頼し、競争やポイントを通じてその体験をゲーム化した。

このような体験こそが、新しいゲームの在り方になるのかもしれないと思う。従来は完成形のゲームのみをユーザーに提供してきたが、トークンエコノミーにより、ユーザーはさまざまな新しい方法で自律的にプレイできるようになる。

それが本当にゲームなのか疑問に思う人もいるかもしれない。しかし、伝統的な意味ではゲームに分類されなくても、ゲーム的な要素を楽しむ人はますます増えていくと考えている。そして、それがゲームの次の進化の方向性かもしれない。

歴史的に、我々ゲーム会社は完成形の体験を提供してきたが、それも変わってくると感じている。

メタバースはゲーム以外の人々の体験にどのような影響を与えるのか?

これはメタバースというだけではなく、インセンティブとしてのトークンも含めての話だが、ゲーミフィケーションは、人々に目的意識を与えるために良い手段だと思っている。社会問題の解決に貢献する動機づけにも活用できる。マンホールのメンテナンスをゲーム化することで、参加者は社会問題を解決するために協力するようになる。それはコミュニティの構築であり、それこそがゲーミフィケーションだ。

私は人々にどう参加を促すのか、そしてそれを成し遂げるためにどうインセンティブを与えるのかということに非常に関心がある。ユーザーに何かを作る力を与えることで、新たな種類のゲームが生まれる可能性がある。これは、私たちゲーム会社がこれまでやってきた方法とは全く逆のアプローチだ。しかし、このようにブロックチェーンベースでユーザーにより開発されたゲームは、ゲーム会社が関与をやめたとしても、トークンなどを活用し運営を続けられる可能性さえある。

RobloxやMinecraftなどのゲームにおいてみられるように、ユーザーが開発したコンテンツは全体的な体験の重要な部分になりつつある。ユーザーはすでにゲーム開発の一部となっている。他の業界においても、顧客のコミュニティを巻き込まずにサービスを提供することは一層難しくなっている。

価値が企業からユーザーコミュニティにシフトしているのである。考えられるあらゆるサービスを単一の企業が提供できるというモデルが崩壊しつつある。消費者サービスを提供するあらゆる企業は顧客コミュニティを巻き込んで報酬を与える仕組みを導入することで、このような変化に対応することを考える必要があるかもしれない。メタバースとブロックチェーンはこのような対応をするために優れたツールとなる可能性がある。

メタバースが消費者に広く普及するのを妨げる障壁は何か?

これはメタバースに限ったことではなく、一般的にほとんどの人々は非連続な新技術に対して保守的になる傾向がある。ブロックチェーンについても、非常に多くの懐疑論や抵抗さえ見られる。業界は熱烈に歓迎する人々と慎重論を唱える人々に二分されており、それは私たちの社内でも見受けられる。そのため、こうした新たな機会に取り組む組織は、既存のゲーム開発組織から独立して構築する必要があった。

しかし、次世代、つまりこのテクノロジーに触れて育ち当たり前と思っている若者が社会のリーダーになるにつれ、この認識は自然に変化するだろう。よって、これは時間が解決してくれる問題だと思う。

約10年前にフリー・トゥ・プレイ(F2P)ゲームが導入されたときにも、ゲーム業界において同様の分裂が見られた。そして現在、F2Pは世の中にあるゲームの大きな割合を占めている。メタバース・ブロックチェーンをめぐる現在の状況は、ちょうど最初に成功したF2Pゲームの1つとして怪盗ロワイヤルがリリースされたときと同様の地点にあると考えている。

今多くの人々が、メタバースはビジネスではない、または単なるゲームである、あるいはこうあるべきだ、そうではないなどと様々なことを言っている。しかし、それを当たり前のように受け入れて育った世代が意思決定を行う頃には、メインストリームになっているだろう。企業にはこの来るべき革命の先を行くチャンスがあると考えている。

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